書店でTOEICの参考書や問題集などを見ると、「新TOEIC」という文字を目にしますよね。

「新、というからには、何か新しいことがあるんだろうか?」と思う方が多いと思いますが、TOEICは2006年に一回目の改定が、2016年の5月に2回目の改定がされました。

2006年 1回目の改定

1回目の改定の背景には、より実用的な英語を出題しより実践的な英語能力を評価したいとの考えがあったようです。

具体的には問題文の長文化や、リスニング問題の英語のバラエティ化などがあります。

こういうのはダラダラ説明するよりもサクッと表で見てしまった方が早いので、リニューアル前と後を表で詳しく見てみましょう。

パート 問題数 変更内容 個人的な所感
リニューアル前 リニューアル後
リスニング PART1 20 10 問題数が減少 引っ掛けが嫌いだったので嬉しいです
PART2 30 30 変更なし
PART3 変更なし(30問) 会話文が長くなる。以前は読み上げられなかった設問が音声で読み上げられるように 設問を読む時間がいらないので助かります
PART4 20 30 問題数が増加。以前は読み上げられなかった設問が音声で読み上げられるように(設問を読む時間が短縮されるので助かります) 設問を読む時間がいらないので助かります
全般 ナレーションのバリエーションが増加。以前はアメリカ英語のみだったが、英国、カナダ、オーストラリア(ニュージーランドを含む)に。 もちろん標準的な英語のナレーションですが、イギリスやオーストラリアの英語は慣れておらず苦手なので、ちょっと大変かも・・・。
リーディング PART5 40 40 文法、語法問題から短文穴埋め問題に名称変更。内容は変更なし
PART6 20 12 問題数が減少。誤文訂正問題の形式が廃止され、長文穴埋め問題に変更。 誤った箇所を見つけようとすると、正しいものまで間違って見えてきてしまい、あまり好きではなかったので、正しいものを選ぶほうがやりやすいと思います。
PART7 40 48 問題数が増加。長文をひとつ読んで内容を問う従来の問題形式が28問、リニューアル前にはなかった、2つの長文(ひとつが企業の広告、それに対するユーザーから企業への質問メール、など)を読んで内容を問われる形式の問題が20問。 問題数が増加。企業のWEBサイトとe-mailの文章を読むなど、IT化の流れを意図した内容になっています。難易度は変わっていないと思うので、長文が増えた分、スピードアップして読む必要がありますね。

違いはこんな感じです。

リスニングの会話文が長くなったり、リーディングの長文が増えたりしていますが、私の個人的な感想としては「むしろ少し簡単になった」のかなあという気がします。

これは個人で得意な問題に差があるので何ともいえませんが、私は旧PART1の写真描写問題と、旧PART6の誤文を見つける問題は、重箱の隅をつつくような感じであまり好きではなかった問題形式なので、問題数が減ったり、問題自体がなくなったりしたことはありがたいなと思います(笑)

では、セクションごとに変更点を見ていきましょう。

ナレーションはアメリカだけだったのが5か国になった

まず、リスニングセクションの大きな変化は、以前のアメリカ英語のみのナレーションから、イギリス、カナダ、オーストラリア(ニュージーランド含む)に発音のバリエーションが増えたということです。

アメリカ英語だけが英語ではないということで変更に至ったのだと思いますが、実際さまざまな国が、それぞれのアクセントでそれぞれの英語を話しているわけですから、TOEICもグローバル化に対応することは良いことだと思います。

ただしこれは、アメリカ英語のリスニングに慣れた方にとっては脅威かと思います。

同じ英語でもかなり違いを感じますもんね。

私自身も、旅行でニュージーランド人と会話した際、相手の言葉が分からなくて苦労しました。

しかしながらTOEICに関しては、訛りのきついナレーションは避けられていますし、その国の標準的な発音で話されるので、多少の聞きづらさはあっても、アメリカ英語が聞けている人が、全く聞き取れないことはないと思いますし、公式問題集や新TOEICに対応したリスニング問題をこなして、慣れておけば対応できるので大丈夫です。

英語のグローバル化に関しては、どんどん進んでいますのでそのうち「インド英語」「チャイニーズ・イングリッシュ」のアクセントまで追加されるかも知れませんね。

余談ですが、日本人は「ネイティブの発音」にこだわる方が多いですよね。

小さい頃から習えば発音がネイティブ並みになる、と幼児教育でも英語が大人気です。

確かに、大人になってから英語を学ぶとネイティブのような発音を習得するのは難しいかも知れませんが、要は「何を話すか」中身が重要だと思います。

ですから日本人も「発音が悪いからダメ」とかそういうこだわりを捨てて、堂々と日本人の英語を話しても良いなぁと思います。

リーディングセクションも少しリニューアル

次にリーディングセクションを見てみましょう。

リーディングセクションの大きな変化は、PART7の長文の問題数が増えたことと、問題の形式が変わったことです。

こちらに関しても、時代の流れに即した変更内容だと思います。

単純に「長文が増えた」と聞くとなんとなく「難しくなった」と感じる方も多いかと思いますが、難易度は特に変わっていません。

長文が2つといっても、企業のウェブサイトを読んで疑問を感じた人が、その企業のカスタマーサービスに問い合わせをするシチュエーションや、2者間でのメールでのやりとりなどで、日常会話程度の内容ですから難易度は低いです。

2016年 2回目の改定

2016年の5月には、2006年の1回目から10年ぶりに改訂がありました。

2回目の改定の背景も1回目同様実践的な英語能力を評価する方向に進んでいます。

TOEICはあくまでもテストなので、英語が理解できなくてもテスト用のテクニックを磨けば問題は解けるというところがありましたが、パート3、4では会話全体を理解できないと解けない問題が出題されていますので、リスニングで聞き取れた瞬間に英文を理解できているかどうかが問われます。

文脈だけ要領よく抑えるだけでは解けない問題が追加されています。

こちらも表で比較してみましょう。

パート 問題数 変更内容 個人的な所感
リニューアル前 リニューアル後
リスニング PART1 10 6 4問減少 難易度が低く点数を稼ぎやすい写真描写問題が減少しているので初心者には痛手だと思います。
PART2 30 25 5問減少 こちらもテクニック次第で点数を稼ぎやすいパートだったので初心者には痛手ですね。
PART3 30 39 9問増加した上に、

文章に全体を理解できていないと解けない問題が追加されている。

会話自体も従来のテスト的な文章から、より実践的な会話になっている。口語が増えている。

一番変わったのはこのPART3です。問題数も増えていますし、ネイティブがよく使う短縮形などの口語表現が追加されているのでより実践的な英語力が問われるようになりました。
PART4 30 30 問題数は変更なし。口語表現が新たに追加。 文章の意図を問われるような問題があるので、英文を全体的に理解することができなければいけなくなりました。
リーディング PART5 40 30 10問減少 PART5の10問減少は痛いですよね。上級者は笑ってるかな。
PART6 12 16 4問増加。穴埋め問題が単語や句を入れるだけでなく、一文を入れる問題が追加。 一文全てを使う問題が追加されているので、穴埋め問題と言っても前後の単語や句から文脈を見ても解けなくなっています。瞬間英文理解のスキルが問われます。
PART7 48 54 6問増加。3つの長文を読んで内容を問われる問題が追加。スマホの普及に合わせてチャットやメールの文章も追加されています。 3つの長文を読んで答える問題が追加されているので、3つの文章の全体を素早く理解することが必要になりました。スマホ対策のチャット文はより短い表現を使うネイティブならではの文なので難易度は低くなっています。より実践的で好きです。

リスニングは簡単な問題が減少

リスニングパートの大きな変更点は、パート1(写真描写問題)2(応答問題)の比較的難易度が低い問題が大きく減少し、パート3(会話問題)、4(説明文問題)の問題が増加している点です。

また、3,4ではより実践的な会話内容に変わっているので、従来のテスト的な長い一番から、ネイティブが日常的に使う短縮形など口語が使われていう上に、会話全体の意味が瞬間的に把握できないと解けない問題が追加されているので、文脈を要領よく感じ取るスキルから、全体を理解するスキルが必要になっています。

リーディングはパート6、7が大きく変更

リーディングパートも比較的点数を取りやすいパート5が10問減少し、パート6(長文穴埋め問題)、7(読解問題)が増加しています。

パート6の穴埋め問題は、単語や句だけでなく新たに一文を入れる問題が追加されていて、より時間を取られるようになりました。

パート7では10年前の一回目の改定で追加された2つの長文を読んで内容を問われる問題にプラスして、3つの長文が追加されています。

内容もスマホでよく使われるチャットやメールのの文章が設問に使われるようになったのでより実践的になりました。

テスト対策ばかりしてきた人にとってはかなり難しくなったと言えます。

スマホでも会話などはネイティブも実際に使うものばかりなのでより実際のシーンに近くなり、シチュエーションが分かりやすくなり内容が把握しやすくなった半面、テスト用のテクニックが通用しない問題が追加されているので、初心者はスコアを稼ぎにくくなったと言えます。

初心者が点数を取りやすい写真描写問題や短文穴埋め問題が減り時間がかかる問題が増加していて、英文全体の意味やニュアンスを一瞬で理解し文脈から答え出せないとスコアは伸びないので、より早く英文を読み素早く解答する練習は必要です。

こうして見ていくと、新TOEICは、決して難易度を上げたわけではなく、より現実に即した形の英語で分かりやすくなっている印象ではあるのですが、TOEIC用のテクニック重視で勉強していた人にとってはかなり難しく感じると思います。

上級者は変わらないでしょう。

「リニューアル」に恐れずに、張り切ってTOEICの勉強を進めましょう!!